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【歴史に学ぶ自然栽培の心】~農業の工業化・商業化の中で誕生した有機農業~

2024/02/10
 
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有機農業と自然栽培

さーちゃん
石の助さん、レイ子さんただいま~!今日のお野菜、産直で全部キレイに並べてきましたよ。全部買ってもらえるといいですね。
石の助
さーちゃんお疲れ様!いや~助かるよ。売れ残りの引上げもたったこれだけか。良かった。

…よいしょっと。よし!注文もらった分の荷造りも完了。

さーちゃん
売り場を見てると、知ってもらえるように、手に取ってもらえるように、他の生産者さんやお店側も一生懸命工夫してるから勉強になりますね。
石の助
まあ、そういう工夫とかアイデアを直接活かせるのが醍醐味だね。いくら大豊作でも売れなかったら自己責任というリスクはあるけど、値段も自分で決めるわけだし、常に考えながら動いてる感じがいいよな。
レイ子さん
一般的な慣行栽培との一番の違いは栽培方法そのものもあるけど、もしかしたらこの「流通・販売ルート」かも知れないわね。
石の助
確かにそれは感じるなぁ。まあ、悪く言えば「作ったあとは人任せ」かも知れないけど、その分栽培に集中できるし、何しろ作って出したらそのままお金になるからなあ。
さーちゃん
そう言えば、有機栽培やオーガニックのコーナーがあるお店もあるけど、一般的な慣行栽培でも地元産直でもないし、また別のルートがあるのかしら?
石の助
ああ、あの有機JASマークがついたやつね。
さーちゃん
ちょっとお値段高めのものが多いけど、やっぱり無農薬で体に良いイメージがあるし、こだわる人にとっては有り難いんだろうな。うちも無農薬だけど何が違うんだろう?
レイ子さん
ん?…有機農業(オーガニック)は無農薬じゃないわよ。あと「体に良い」ってのもあくまでイメージね。
さーちゃん
え、そうなの!?
石の助
そう言えば、同じ野菜を「慣行」「有機」「自然」3つ並べて、有機野菜が真っ先にドロドロに腐敗した写真とか良く見るよな。

だから俺は有機農業じゃなくて自然栽培なのだ!ガハハ!

レイ子さん
自然栽培(自然農法・自然農)は立派な有機農業よ。
さーちゃん
ば、爆弾発言!
石の助
爆弾レイ子!

有機農業の成り立ち

レイ子さん
まずは日本の有機農業の成り立ちね。ちきゅ丸~。
ちきゅ丸
ガッテンだ!逆回転~。

1945(昭和20年)…第二次世界大戦の終戦。

化学肥料と化学合成農薬を使った農業が戦後爆発的に拡大。戦後の食糧危機を脱する力になる。

1961(昭和36年)…農業生産性の引き上げと農家所得の倍増を謳った「農業基本法」が公布。

高度経済成長の時代(1955~1973)に入り、農業の工業化・商業化は更に加速。現在の大量生産・大量消費の原形が作られるが、同時に工業化の弊害として公害や農薬の問題が起こり始める。

レイ子さん
1962年に発刊された、レイチェル・カーソンの「沈黙の春(Silent Spring)」は有名ね。
さーちゃん
日本では1975年に発刊された、有吉佐和子さんの「複合汚染」が反響を呼んだんですよね。

1971(昭和46年)…経済合理主義の近代化農業に対して「有機農業」という言葉が生まれ、その運動の母体として「日本有機農業研究会」が設立。

結成を呼びかけたのは、協同組合運動家で当時協同組合経営研究所理事長をしていた一楽照雄でした。愛媛で自然農法を実践する福岡正信、食べものと健康との強いつながりを指摘し無農薬栽培を進めた医師・梁瀬義亮(慈光会)、農薬禍を憂えて農村医学を創始した若月俊一(佐久総合病院)らに触発され、初代代表幹事に塩見友之助(元農林事務次官)、常任幹事に一楽ほか3名、事務局長築地文太郎、そして土壌微生物の重要性を説く足立仁、横井利直、自然農法の指導者露木裕喜夫など11名を幹事として、旗揚げしました。本会の歩みより
石の助
なんか凄い顔ぶれだな。自然農法で有名な福岡正信さんもいるぞ!

それにしても、なんで「有機」農業なのか素朴な疑問だな。よく「有機物」って言葉聞くけど、そもそも有機物ってなんだっけ?

レイ子さん
有機物ってのは、生き物由来の炭素化合物と定義されてるわ。
石の助
難しいな…。なんとなく自然のイメージはあるけど。
さーちゃん
有機肥料と言えば「堆肥」や「厩肥」…。有機の反対は無機…。あっ!

化学肥料&化学合成農薬=無機農業だから、それに対して有機農業

石の助
なるほど、自然栽培(自然農法)は立派な有機農業ってのはこういうことか!
レイ子さん
そういうこと。

つまり農業の原点に帰ろうとしたのね。

自然栽培(自然農法)は本来有機農業が目指したお手本と言っても過言ではないわ。だから、自然栽培(自然農法)に取り組む人には、正しい有機農業(オーガニック)をリードする役割があるんじゃないかって思ってるの。

原点に帰れば、有機農業と自然栽培の根っこが同じだってこともよくわかるわ。奇跡のリンゴで有名な木村秋則さんと有機農業研究会発足に関わった医師の梁瀬義亮さん。全く面識のないお二人が、違う時に違う場所で同じ経験・発見をされた内容はとても興味深いわ。

間違った有機農業は、病気や虫の被害も慣行農業より悲惨な状況になるし、腐敗しやすい作物が育つの。そんな野菜が体に良いとは思えないでしょ。

石の助
そうか!それが腐敗実験の話か。よし、今日から自信もって「有機農業」「オーガニック」でアピールしよう!
レイ子さん
はい、アウト!

有機JAS

その後売り場に氾濫する「有機」「無農薬」「減農薬」等の表示と、混乱する消費者。

1992(平成4年)…有機農産物に対する表示ガイドライン制定。(強制力なし)

2001(平成13年)…有機JASの認証制度開始

※以降、「有機」「オーガニック」と表示できるのは有機JAS認証を取得した者のみ

2006(平成18年)…有機農業推進法

2021(令和3年)…みどりの食料システム戦略策定

※有機農業をめぐる事情pdf(令和4年7月20日更新)

※2050年までに目指す姿として「耕地面積に占める有機農業の取組面積の割合を25%(100万ha)に拡大」としている。ちなみに令和2年の段階で、有機JAS認証を取得している農地としていない農地を合わせても0.6%。

石の助
お~資料も立派だし、国が動いて随分盛り上がって…るのか?
レイ子さん
さっき石の助さん「有機」「オーガニック」をアピールするぞ!って言ってたけど、有機JASマークを表示できるというその為だけに、膨大な書類の作成、結構なお金が必要だとしたら?しかも毎年お金払って監査も受けるのよ。
石の助
そんなもんいらん!
レイ子さん
しかも相当厳しい条件を突きつけられるのかと思いきや、有機JASでは使用可能な農薬までちゃんと説明されてるわ。

※有機農産物の日本農林規格pdf(最終改正 令和4年9月22日)

さーちゃん
有機農業は無農薬じゃないってこのことね!
レイ子さん
本来目指してたものとは似ても似つかないものになった上に、名前は国が持ってっちゃった感じね。
石の助
超特大の場外ファールだな。

商業>工業>農業

石の助
結局有機農業も、戦後の農業が工業化・商業化した流れと同じに見えるな。
レイ子さん
工業化を決して否定しているわけじゃなくて、工業的なアプローチとでも言い換えれば、それは「より効率的に」「より高品質に」という工夫だから、それはとても大切なことよね。
さーちゃん
確かに、そう考えると商業的なアプローチも、「より知ってもらえるには」「買ってもらえるには」っていうアイデアだったり、原価を抑える努力だったりするから、とても大切なことですよね。
石の助
本来そうだよな。だけど現代の工業化は膨大なエネルギー消費によって成り立ってるし、商業化にいたっては、人間がお金の奴隷みたいになってしまってる。

だけど仮に、農業的なアプローチとでもいう表現をしたら、なんか新鮮な気がするな。

さーちゃん
新鮮ですね!食べ物だけじゃなくて、それを生み出した大地や太陽、自然の恵みに対する感謝。なんかジ〇リの世界。
レイ子さん
そうね。どの分野においても「あるものを大切に使う」感謝の心と知恵を感じるわ。農業・工業・商業が循環した経済の理想かも知れないわね。
石の助
今の時代は「お金になるかならないか」「いかに売り上げを伸ばすか」その「商」を頂点にして、その為の手段としての「工」があり、「農」はそれにいかに合わせられるかが技術力だと言わんばかりだよ。

自然栽培も認証化の動きをチラホラ聞くけど、定義やら規格が必要になるから結局同じように本質を見失うんじゃないかな。

さーちゃん
個性や多様性といった、大切な何かを置き忘れてしまった生きづらい世の中なのも頷けますね。

“志”農工商

石の助
江戸時代の士農工商っていう身分制度あるだろ。あれ、身分制度じゃなくて価値観の順番だととらえたら、今の時代にとても大事な気がするんだよな。
さーちゃん
今は全く逆で商工農の順ですね。…武士はいませんけど。
石の助
「士」ってのは「志」で、「人」って意味でとらえたらどうだろう。現代はある意味「人」を置き去りにした社会だしな。
さーちゃん
志農工商!
レイ子さん
決して人間中心という意味ではなく、「人」が大事だと伝わるわね。
石の助
価値観の順番ってのもあるけど、「人間を手段にするな!」っていうことかな。
レイ子さん
本当にその通りね。生きるために「農」があり、自分だけでなく自他共に生きるために「工」「商」の知恵がある。
さーちゃん
社会へのメッセージってだけじゃなくて、自分自身の生き方にも当てはまりますね。
石の助
ま、そういう訳でこれからも「志」のままに、どんな場所でどんな生き方をしても農業はやり続けていくので、これからもよろしく!
さーちゃん
よろしくお願いします!

 

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